今もまだ覚えてるんだけど、俺が小学生のころ、ベトちゃんドクちゃんのドキュメンタリーを観てすごくショックで、世の中にはこんな悲惨なことがあるのかとガキながら頭が痛くなったことがある。すごく強く記憶に残っている。今、俺はその国ベトナムにいる。
山岳民族の村、SAPAからガタガタ道ときて、そんでもって2回も土砂崩れを経て約9時間。DIEN BIEN PHU(ディエンビエンフー)に着いた。ここはフランスからの独立を求めたインドシナ戦争の最後の舞台、そしてそこからベトナム戦争が始まった場所でもある。コミックIKKIでやっている『ディエンビエンフー』も読んでいたからなおさらこの場所に来てみたかったし、なんていうか何かを観たいっていうかそういうんじゃなくてただ純粋にこの場所に立ってみたかった。居てみたかった。この場所の空気を吸ってみたかった。歴史が変わった場所の。そしてここには戦車や戦闘機の残骸などが今も残してあって、道を歩いていると観ることができる。そしてここでホーチミン率いる民主共和国がフランスに勝ったんだ。そのフランス軍が最後まで抵抗していた丘に行ってきた。名前を『A1の丘』という。
ちょうど夕方だったこともあり、景色がオレンジ色に光ってて厳かな雰囲気になっていた。丘に登ると、この場所はきれいに山に囲まれた盆地だということがわかる。その山に囲まれた地形を利用してフランス軍はここで戦ったんだって。こんなにいい景色なのに。だって丘だもん、そもそも景色いいに決まってんじゃん。ただ、丘の上においてある戦車は銃傷耐えなくて生々しかった。触ってみたらとてつもなく冷たかった。
丘の中心らへんに直径10mくらいの大きな穴が開いていた。きっと爆弾が落ちたかして空いた穴だろう。どっちの軍が空けたのかわからないけど、気持ちがよくないかんじがする。穴を覗き込んで、何か吸い込まれるっていうか、嫌な気持ち。そこでずーっと見つめていたらおそらく現地の中学生くらいの女の子4人がやってきてその穴の淵の所にすわりはじめた。何してんだろう?って観ていたら、その子たち、穴の淵で漫画読んでました。すげーとこで漫画よんでんなぁって思ってると、きっと暇になったんでしょう、ひとりの女の子がその友達の筆箱を穴の中落とし始めたんです。なんつーか、俺がやりそうなイタズラをすごい場所でやってました。そしたら止まらない。筆箱を落とされた友達は違う友達の本と落として、また落とされた友達はおかえしするのルーティーン。結果的に持ってるものほとんど落ちてたね、穴に。そう爆心地に。こういう場合大人が来て、こんなとこで何してんだこらーって叱るのが定説だけど、俺はそのままでいいと思ったんです。戦争体験した人から見れば申し訳ないかもしんないけど、いつまでも暗くどんよりしてるよりこうやって戦争してた場所を遊び場にしちゃうくらいの変化が必要だと思ったんです。きっとベトナムのために戦っていた人たちもこうやって子供が遊んでる光景の方を望んでると思うし。
そのうち、触ったらとてつもなく冷たくて生傷の耐えない戦車の上に乗って子供が遊び始めた。よくみてたらここでランニングするおじいちゃんもいたし、この丘を近道に使ってる人もいた。その日のうちにベトナム軍の墓へ墓参りに行った。そこでもおばちゃんたちがウォーキングしてたし、少年たちがサッカーしてた。地元の人たちはここを公園的にみてるのかな。それがベストと思ったし、地元の人たちがそうするのは理想だと思った。
日本へ帰ったらまだ読んでない漫画『ディエンビエンフー』の3巻を読もう。
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